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ecoだけマーケターのエコだけ豆知識 023 商品を変えなくても、価値は変えられる。ブランドを動かす「意味の再設計」

SDGs

こんにちは。
「エコロジーとエコノミーをビジネス化する」を目標に活動している”ecoだけマーケター“たちが、最近気になる環境やDXにまつわる話題を短く紹介するエコなブログです。「○○したいけど、○○できない」とお悩みの、何かとお疲れ様の皆様に向けて、小さな取り組みなどを紹介します。コーヒーブレイクや休憩の合間にお読みください。

「変えるべきは商品ではなく、その商品が果たす役割かもしれない」

企業が成長を目指すとき、最初に検討されやすいのは新商品です。新しい成分を加える、新しい機能を搭載する、新しいデザインに変える。既存商品が伸び悩めば、処方や容器を見直し、パッケージを刷新し、目に見える変化をつくろうとします。

確かに、商品そのものを改良することは重要です。しかし、新しいものを加えなければ、新しい価値は生まれないのでしょうか。

生活者が商品を選ぶ理由を丁寧に見ていくと、必ずしもそうではないことが分かります。商品そのものは変わっていなくても、その商品が使われる場面や、生活の中で果たす役割が変わることで、以前とは異なる価値として受け入れられることがあるからです。

かつては一部の人だけが使う専門的な商品だったものが、使う場面を分かりやすく示すことで、日常の選択肢として広がることがあります。少量の商品も、単なる廉価版としてではなく、新しい習慣を無理なく始めるための体験として捉え直せば、役割が変わります。簡素な包装も、コストを抑えた梱包ではなく、開封や廃棄の手間を減らす設計として示されれば、生活者に届く意味は変わります。

このように、モノを大きく変えるのではなく、モノの見方や置かれる文脈を変えることで、新たな価値を生み出す考え方が「リフレーミング」です。

リフレーミングとは、商品を別の枠組み、つまり別のフレームから捉え直すことです。それまで当然だと思われていた役割や評価基準をいったん外し、「この商品は、ほかにどのような意味を持ち得るのか」と問い直します。

ただし、これは言葉だけを新しくすることではありません。同じ商品に目新しいキャッチコピーを付けたり、流行の表現に置き換えたりするだけでは、リフレーミングとは呼べません。重要なのは、商品と生活者の関係を捉え直し、その商品が生活の中で果たす役割を再定義することです。

商品の価値は、商品だけでは決まらない

企業は、自社商品の価値を機能や性能から説明しようとします。配合成分、加工技術、耐久性、精度、容量、使用方法など、商品そのものが持つ特徴を言葉にします。

これらは、商品を理解してもらうために欠かせない情報です。しかし、生活者は機能だけを見て商品を選んでいるわけではありません。

同じ機能を持つ商品でも、誰が、いつ、どのような場面で使うかによって価値は変わります。時間に余裕のある夜に使う商品と、忙しい朝に使う商品では、求められる役割が異なります。自分のために使う場合と、誰かに贈る場合でも、商品に感じる意味は変わります。

たとえば、少量の商品は、量が少ないだけなら割高な商品に見えるかもしれません。しかし、初めて使う人の不安を小さくし、自分に合うかを確かめる時間を提供するものと捉えれば、それは単なる小容量商品ではなくなります。「購入前のお試し」から「新しい習慣を始めるための数日間」へ意味を変えることで、商品に必要な情報や届け方も変わってきます。使用する順番、適切な量、生活に取り入れるタイミングまで丁寧に案内すれば、少量の商品はブランドとの最初の関係をつくる体験になります。

商品は変わっていません。変わったのは、その商品が生活者の中で果たす役割です。

価値とは、商品内部に固定されているものではありません。商品の特徴と、生活者の状況や悩みが結び付いたときに生まれます。企業が持っている機能を一方的に説明するだけでは、その接点は生まれにくいのです。

リフレーミングは、単なる言い換えではない

リフレーミングという言葉から、商品の見せ方や広告表現を変えることを想像する人もいるかもしれません。しかし、実態を変えずに表現だけを変えれば、生活者からは都合のよい言い換えと受け取られる可能性があります。

簡素な包装を「環境配慮」と呼ぶだけでは、十分ではありません。なぜ資材を減らしたのか、それによって配送や保管、開封、分別、廃棄がどう変わるのかまで一貫していなければ、環境配慮という意味は成立しないからです。

リフレーミングでは、まず企業側の成果を生活者側の変化へ翻訳します。

資材使用量を削減したという企業側の成果は、生活者にとっては、開封後に大量のゴミが残らないことかもしれません。配送効率の向上は、受け取りやすい大きさや、保管場所を取らないこととして実感されるかもしれません。再生可能な素材への変更は、使用後に捨て方で迷わない安心につながる可能性があります。

同じように、高度な研究成果も、専門用語のままでは生活者に届きません。その研究によって、毎日の使用感がどう変わるのか。年齢や環境の変化に対して、どのように寄り添えるようになったのか。生活者が実感できる時間や場面へ置き換えて初めて、研究成果はブランドの価値になります。

リフレーミングとは、事実を魅力的に言い換えることではありません。企業が持つ事実の中から、生活者にとって意味のある関係を見つけることです。

企業の中には、まだ意味を与えられていない資産がある

新しい商品を考えるとき、企業は社外に答えを求めがちです。新素材、新技術、新しい提携先、新しい市場を探し、これまでになかった要素を取り込もうとします。

もちろん、外部の知見や技術を取り入れることは、成長のために重要です。しかしその前に、企業の中には、まだ十分に意味付けされていない資産が残っている可能性があります。

長年積み重ねてきた研究、製造現場の工夫、品質管理の基準、顧客から寄せられた声、地域との関係、販売網、包装技術、物流の経験。これらはすべて、企業が時間をかけて築いてきた資産です。

ところが、社内ではそれぞれが別々の部門に保管されています。研究成果は研究部門に、製造ノウハウは工場に、顧客の声は営業やカスタマーサポートに、包装の知見は資材や設計の担当者に蓄積されます。

各部門の中では価値が理解されていても、それらが一つの顧客体験として結び付いていないことは少なくありません。企業には多くの強みがあるのに、生活者から見ると、その強みが何のために存在するのか分からない状態です。

そこで必要になるのが、問いの転換です。

「この技術で何をつくれるか」ではなく、「この技術は誰のどのような不便を軽くできるか」と考える。「この素材にはどのような機能があるか」ではなく、「この素材によって、どのような時間を心地よくできるか」と考える。「どれだけ資材を減らしたか」ではなく、「生活者のどのような手間や迷いを減らせたか」と考える。

問いの枠組みが変わると、同じ資産が別の表情を見せ始めます。社内では当たり前だと思われていた技術が、生活者にとっては大きな安心につながるかもしれません。長年続けてきた品質管理が、単なる社内基準ではなく、毎日使い続けられる理由になるかもしれません。

新しい価値は、必ずしも新しい資産から生まれるわけではありません。すでに持っている資産を、新しい問いから見直すことで生まれる場合があります。

技術の置き場所が変わると、事業の意味も変わる

ある業界では当たり前になっている技術が、別の業界では新しい価値を生むことがあります。技術そのものを大きく変えなくても、使う場所、届ける相手、解決する課題が変われば、その意味も変わります。

精密なセンシング技術は、生産速度や加工精度を高める設備として見ることができます。しかし別の角度から見れば、熟練者が無意識に行ってきた力加減や位置調整を記録し、次の世代へ残すための技術とも捉えられます。

その瞬間、この技術の意味は「機械の高度化」から「人の技術を失わない仕組み」へ変わります。

包装技術も同様です。包装は、商品を保護し、輸送し、店頭に並べるためのものと考えられてきました。しかし、開封のしやすさ、使用後の分別、保管時の省スペース性まで含めて考えれば、包装は商品を守るためだけのものではなく、生活者の行動を支えるサービスになります。

さらに、特定の産業や地域で研究されてきた生物資源が、美容や健康の領域と結び付くことで、新しい顧客価値を生むこともあります。ここで重要なのは、素材をそのまま別の商品に入れることではありません。その資源が持つ背景、研究の蓄積、地域との関係を、どのような生活場面と結び付けるかです。

新規事業というと、ゼロから何かを発明することを想像しがちです。しかし実際には、既存技術の置き場所を変え、これまで接点のなかった課題と結び付けることで生まれる事業もあります。

これらは、企業が持つ資産の用途を増やすだけではありません。技術に与えられていた意味そのものを変える取り組みです。

ブランドリニューアルは、外観を新しくすることではない

ブランドが長く続くと、生活者との間に強い信頼が生まれます。その一方で、時代の変化とともに、以前は伝わっていた価値が伝わりにくくなることもあります。

そこでブランドリニューアルが行われます。しかし、ロゴやパッケージを変えただけでは、生活者に一時的な新鮮さを与えることはできても、ブランドの役割までは変わりません。

本来のリニューアルで必要なのは、「何を新しく見せるか」ではなく、「このブランドは、今の生活者にとって何になるのか」を問い直すことです。

長年販売してきた化粧品も、単に肌の状態を整える商品としてではなく、忙しい毎日の中で自分の状態を確認する時間をつくるものと捉え直すことができます。研究成果を反映した商品も、最新技術を搭載した高機能商品としてではなく、年齢による変化を否定せず、その人らしい状態を支えるものとして位置付け直すことができます。

ここで重要なのは、過去を否定しないことです。

リフレーミングは、それまでのブランド価値を捨て、別の意味へ乗り換えることではありません。長年積み重ねてきた技術や信頼を、現在の生活者が理解できる文脈へ置き直すことです。

変えないものを決めるだけでは、ブランドは継承されません。その価値が今の生活の中でどのような意味を持つのかを示して初めて、過去の蓄積が現在の選択理由になります。

「何ができるか」から「いつ思い出されるか」へ

企業の商品説明は、「何ができるか」を中心に組み立てられます。保湿できる、汚れを落とせる、肌を守れる、軽量化できる、再利用できる。機能を明確にすることは大切ですが、それだけでは生活者の記憶に残らないことがあります。

生活者が商品を選ぶのは、機能について考えているときだけではないからです。

朝、鏡を見て昨日との違いを感じたとき。旅行の荷物を少しでも減らしたいとき。新しいケアに興味はあるものの、失敗したくないと感じたとき。使い終わった容器を前に、どのゴミ箱へ入れるべきか迷ったとき。こうした具体的な場面が、商品を思い出す入口になります。

リフレーミングでは、商品カテゴリーそのものを変えなくても、思い出される場面を増やすことができます。

たとえば、少量の商品を「購入前に品質を試すもの」とだけ捉えると、使用場面は限定されます。しかし、「旅行先でも普段のケアを続けるためのもの」「季節の変わり目に状態を確かめるためのもの」「新しい習慣を短期間で体験するためのもの」と捉え直せば、複数の場面と結び付きます。

これは、商品の対象を無理に広げることとは異なります。誰にでも売ろうとするのではなく、その商品が役に立つ具体的な状況を発見し、生活者が自分のこととして思い出せる入口を増やすのです。

何ができる商品かという説明から、どのようなときに思い出してほしい商品かという設計へ。この転換によって、同じ商品と新しい顧客との接点が生まれます。

意味を変えると、必要な改善が見えてくる

モノを変えずに意味を変えるというと、商品開発に手を加えず、広告表現だけで売り方を変える手法のように見えるかもしれません。しかし、本来のリフレーミングは、商品を変えないことを最終目的にするものではありません。

最初に意味を定めることで、本当に必要な変更を明らかにするための考え方です。

少量の商品を「新しい習慣を始める体験」と定義すれば、単に商品を小さくして届けるだけでは不十分だと分かります。何日間使えばよいのか、どの順番で使うのか、どのような変化を観察すればよいのかを案内する必要が出てきます。

簡易包装を「廃棄の手間を減らす設計」と捉えれば、資材の量を減らすだけでなく、開封しやすさ、分別しやすさ、表示の分かりやすさを見直す必要があります。

研究技術を「年齢変化に寄り添う根拠」と位置付ければ、専門用語を並べるのではなく、使用感や継続時の体験、生活者が理解できる説明へ落とし込まなければなりません。

このように、意味を変えると、商品、包装、情報、販売方法、サポートのどこに矛盾があるのかが見えてきます。

意味を決めずに改良を始めると、成分を増やし、容器を変え、包装を豪華にし、説明を追加するという足し算になりがちです。一方、意味を先に決めれば、その意味に必要のない変更を減らすことができます。

リフレーミングは、変更を避けるための方法ではありません。意味のない変更を避け、本当に必要な変更へ集中するための方法です。

意味の再設計には、三つの条件がある

同じ商品に新しい意味を与えるためには、その意味が企業の都合だけでつくられたものであってはいけません。

第一に、企業の強みに裏付けられている必要があります。長年の研究、独自技術、製造ノウハウ、地域資源、顧客との関係など、新しい意味を支える事実が必要です。実態のない物語は、広告表現としては成立しても、長期的なブランド価値にはなりません。

第二に、生活者の具体的な場面と結び付いている必要があります。「より豊かな生活」「未来のための商品」といった抽象的な言葉だけでは、自分との関係を想像しにくいからです。誰が、いつ、どのような状況で、何に困り、商品によって何が変わるのか。そこまで具体化することで、意味は生活者の中に着地します。

第三に、商品体験と矛盾していないことが必要です。環境配慮を掲げながら過剰な梱包で届いたり、手軽さを訴えながら複雑な使用方法を求めたりすれば、新しい意味は成立しません。広告、購入方法、価格、容器、包装、使用感、アフターサポートまでが、同じ意味を支えている必要があります。

企業の強み、生活者の場面、実際の商品体験。この三つがつながって初めて、リフレーミングは単なる言い換えから事業戦略へ変わります。

強みを全部伝えるほど、意味は弱くなる

企業の資産を見直すと、多くの強みが見つかります。長年の歴史、研究成果、独自素材、製造技術、品質管理、環境対応、地域性、販売実績。それらはすべて大切な資産です。

しかし、すべてを一つの商品に盛り込んで伝えようとすると、かえって商品の意味が分かりにくくなります。

リフレーミングは、強みを追加する作業ではなく、強みの役割を整理する作業です。

生活者の特定の場面に対して、最も意味を持つ強みを一つ選ぶ。それを商品の中心的な価値に置き、ほかの強みは、その価値を支える根拠として配置する。何を伝えるかだけでなく、何を前面に出さないかを決めることが重要です。

研究成果も、包装技術も、企業の歴史も、それぞれを別々に主張すれば、情報が競合します。しかし、「新しい習慣を安心して始められる」という一つの意味を中心に置けば、研究成果は品質への安心を支え、包装は使い始めやすさを支え、企業の歴史は継続して提供できる信頼を支える要素になります。

資産そのものは変わっていません。変わったのは、それぞれの資産がブランドの中で果たす役割です。

新しい価値は、新しいモノからだけ生まれるのではない

企業は成長を求めるほど、新商品、新技術、新市場へ目を向けます。新しいものを生み出すことは、事業を前進させる重要な力です。

しかし、新しいものを増やし続けても、それが生活者にとってどのような意味を持つのかが整理されていなければ、選ばれる理由は強くなりません。商品数や機能が増える一方で、ブランドが何をしてくれる存在なのかが分かりにくくなることもあります。

そのようなときに必要なのは、今ある商品を古いものとして切り捨てることではありません。すでに持っている技術や商品、サービスを、別の視点から見つけ直すことです。

この商品は、何でできているのか。どのような機能を持っているのか。それだけでなく、誰の、どのような時間に入り込み、どのような不安や迷いを軽くできるのかを考える。

企業が伝えたい価値を、生活者が自分のこととして理解できる意味へ置き換える。商品の機能を説明するだけでなく、生活の中で果たす役割を示す。企業に蓄積された資産を、現在の生活者が選べる形に並べ直す。

モノは同じでも、置かれる文脈が変われば、見える市場は変わります。解決する課題が変われば、出会う顧客も変わります。思い出される場面が変われば、選ばれる理由も変わります。

もちろん、リフレーミングだけで、すべての商品が再成長できるわけではありません。品質が期待に届いていなければ改善が必要です。生活者の不満が機能にあるなら、商品そのものを変えなければなりません。

だからこそ、先に意味を考えることが重要です。

何を変えればよいか分からないまま商品を改良するのではなく、誰に、どのような意味を届けたいのかを定め、その意味を実現するために必要な部分だけを変える。モノから考えるのではなく、意味からモノを見直すのです。

足りないのは、新しい商品ではないかもしれません。

今ある商品を、新しい意味で見つけ直す視点なのかもしれません。

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