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ecoだけマーケターのエコだけ豆知識 022 環境対応は、営業資料になる。

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― 排出量取引制度は、大企業だけの話では終わらない

こんにちは。
「エコロジーとエコノミーをビジネス化する」を目標に活動している”ecoだけマーケター“たちが、最近気になる環境やDXにまつわる話題を短く紹介するエコなブログです。「○○したいけど、○○できない」とお悩みの、何かとお疲れ様の皆様に向けて、小さな取り組みなどを紹介します。コーヒーブレイクや休憩の合間にお読みください。

排出量取引制度は、大企業だけの話では終わらない

2026年度から、日本の排出量取引制度が本格化しています。経済産業省の案内では、CO₂の直接排出量が前年度までの3年度平均で10万トン以上の事業者が対象とされており、鉄鋼、化学、セメント、電力、素材、自動車関連など、エネルギーを大量に使う大規模事業者が中心になると考えられます。

こう聞くと、多くの中小企業は「うちは10万トンも排出していない」「制度の対象ではないから関係ない」「大企業の話であって、自社にはまだ先のことだ」と感じるかもしれません。たしかに、制度の直接的な対象だけを見れば、そのように見えるのも自然です。

しかし、これから起きる変化は、制度対象企業の中だけで完結するものではありません。むしろ重要なのは、その先にあるサプライチェーン全体への波及です。

大企業がCO₂排出量を管理しはじめると、その視線は自社工場の中だけにとどまりません。原材料の調達、部品の製造、加工、包装、物流、保管、廃棄といった、製品やサービスが顧客に届くまでの流れ全体が、少しずつ確認対象になっていきます。つまり、制度の直接対象ではない中小企業にも、取引先から環境対応について聞かれる場面が増えていく可能性があります。弊社にも、得意先や協力会社からの問い合わせが増えており、独自の調達ガイドラインを作成している企業も、確実に増えています。

たとえば、「この製品を作るときのCO₂排出量はどれくらいですか」「配送時の環境負荷は把握していますか」「再生材は使っていますか」「省エネ工程はありますか」「環境対応を説明できる資料はありますか」「その数値の根拠はありますか」といった質問に、すぐに誠実な答えを出せる状態になっている中小企業は、まだ多くありません。

これまでの取引では、品質、価格、納期にきちんと対応できれば、大きな評価を得ることができました。もちろん、これからも品質、価格、納期が重要であることに変わりはありません。ただし、そこにもう一つ、見えにくい評価軸が加わりはじめています。それが、環境対応を説明できるかどうかです。

ここで誤解してはいけないのは、中小企業がいきなり完璧な脱炭素企業になる必要はないということです。太陽光発電を導入しなければならない、すべての設備を最新型に変えなければならない、CO₂排出量を完全にゼロにしなければならないと考えると、環境対応は大きな負担に見えてしまいます。

しかし、最初に必要なのは、巨大な投資ではありません。まず必要なのは、自社の状況を説明できることです。自社でどれくらい電気を使っているのか、どれくらい燃料を使っているのか、どの工程でエネルギーを多く使っているのか。配送はどの範囲で行っているのか、廃棄物はどのように処理しているのか、再生材や省エネ設備、効率化の取り組みはあるのか。こうした情報を社内で把握し、整理し、取引先に聞かれたときに答えられる状態にしておくことが、これからの中小企業にとって現実的な第一歩になります。

脱炭素という言葉は、どうしても大きく聞こえます。国の政策、世界の気候変動、エネルギー転換、カーボンニュートラルといった言葉が並ぶと、自社の現場からは少し遠い話に感じられるかもしれません。しかし、取引先から「御社の工程では、CO₂排出量を把握されていますか」と質問された瞬間に、脱炭素は急に現場の話になります。

その質問に対して、何も答えられない会社と、まだ十分ではなくても「現在ここまで把握しています」「この部分から改善を進めています」と言える会社では、相手に与える印象が大きく変わります。大切なのは、完璧な答えを持っていることではありません。聞かれたときに、何も出せない状態から抜け出すことです。

これからの環境対応は、単なる社会貢献ではなくなっていきます。もちろん、地球環境に配慮することは大切です。しかし、企業活動の現場では、それだけでは動きにくい面もあります。日々の仕事には、コスト、人手、納期、設備、利益があります。理想だけでは進まないのが現実です。だからこそ、環境対応を「正しいこと」としてだけ捉えるのではなく、「営業上の信用」として捉える必要があります。

環境対応は、営業資料になる。

環境対応は、営業資料になる。

この視点が重要です。

たとえば、自社の省エネ設備の導入実績、使用電力の削減努力、配送効率を高める工夫、再生材や環境配慮素材の採用実績、廃棄ロスを減らす工程改善、長く使える製品設計、歩留まりを高める生産管理、過剰包装を避ける提案、不良率を下げる品質管理。これらはすべて、環境対応として語ることができます。

しかも、多くの中小企業は、すでに何らかの取り組みをしています。電気代が高いから省エネを意識している、材料ロスを減らすために工程を見直している、配送回数を減らすために納品計画を工夫したり共同配送をはじめている、不良品を減らすために品質管理を徹底している、過剰在庫を持たないように生産管理をしている。これらは、もともとはコスト削減や業務改善のために行ってきたことかもしれません。しかし、見方を変えれば、環境負荷を減らす取り組みでもあります。

問題は、何もやっていないことではありません。やっていることを、環境対応として説明できていないことです。ここに、多くの中小企業のチャンスがあります。

環境対応というと、新しいことを始めなければならないと思いがちです。もちろん、今後は新しい設備投資やエネルギー転換が必要になる場面もあるでしょう。しかし、その前にやるべきことがあります。自社がすでに行っている改善を、環境価値として翻訳することです。

現場の改善を、取引先に伝わる言葉に変える。コスト削減の工夫を、CO₂削減の可能性として整理する。品質管理の取り組みを、ロス削減として示す。配送効率化を、環境負荷低減として説明する。省エネを、価格だけでなく持続可能性の観点から語る。これは、単なるきれいごとではありません。これから取引先が環境情報を求めるようになったとき、自社の取り組みを説明できる会社は、選ばれやすくなります。反対に、何も整理していない会社は、価格や品質が同じでも、比較の場面で不利になるかもしれません。

排出量取引制度の本格化は、制度対象企業にとっては義務対応です。しかし、その取引先にとっては、営業環境の変化でもあります。大企業が排出量を管理する。そのために、調達先に確認する。調達先は、自社の工程やエネルギー使用状況を説明する必要が出てくる。その結果、環境情報を出せる企業と出せない企業の差が見えはじめるのです。

この流れは、すべての業界で一斉に起きるわけではないでしょう。しかし、少しずつ確実に広がっていきます。最初は大企業との取引で求められ、次に業界全体の標準になり、やがて見積依頼や提案書の中に環境情報の項目が入ってくる。最後には、聞かれること自体が当たり前になっていくかもしれません。そのときになってから慌てて準備するのでは遅い可能性があります。今のうちに、自社の環境対応を棚卸ししておくことが大切です。

では、中小企業は何から始めればよいのでしょうか。まずは、難しく考えすぎないことです。専門的な算定システムや詳細なLCAをいきなり導入する前に、社内で把握できる情報を集めるところから始めればよいのです。

月ごとの電気使用量、ガスや燃料の使用量、主要な設備の稼働状況、配送距離や配送回数、廃棄物の量、材料ロスの量、再生材や環境配慮材料の使用実績、省エネ設備や高効率機器の導入状況、不良率改善や歩留まり改善の取り組み。これらをまとめるだけでも、自社の環境対応を説明する土台になります。

次に、それを営業資料として見せられる形にすることです。「当社は環境に配慮しています」と言うだけでは、相手には伝わりません。必要なのは、具体的な事実です。

たとえば、「工場照明をLED化しています」「配送ルートを見直し、納品回数の削減に取り組んでいます」「材料ロス削減のため、工程管理を見直しています」「再生材を使用した提案が可能です」「廃棄物削減のため、歩留まり改善を継続しています」「電力使用量を月次で確認しています」と書けるだけでも、取引先から見た安心感は変わります。

大げさな表現は必要ありません。むしろ、誠実に、具体的に、現在できていることと、今後取り組むことを分けて伝える方が信頼されます。「すでにできていること」「現在把握していること」「今後改善していくこと」を整理するだけで、環境対応は営業資料になります。

そして、もう一つ大事なのは、環境対応を担当者任せにしないことです。環境対応は、総務だけの仕事でも、品質管理だけの仕事でも、製造現場だけの仕事でもありません。営業、製造、配送、管理、経営がつながって初めて、取引先に説明できる形になります。

営業は、取引先から何を聞かれているかを知っています。製造は、現場でどこにエネルギーやロスがあるかを知っています。配送は、納品の実態を知っています。管理部門は、電気代や燃料費の数字を持っています。経営は、どこまで投資できるかを判断します。これらがバラバラのままだと、環境対応は進みません。逆に、社内の情報をつなぐだけで、すでにある取り組みが見えてきます。環境対応の第一歩は、特別な部署を作ることではなく、社内の情報をつなぎ直すことなのかもしれません。

排出量取引制度は、大企業だけの制度に見えます。しかし、実際には、日本企業全体に「測る」「説明する」「改善する」という新しい習慣を求めていくきっかけになります。対象企業は、排出量を管理しなければならない。その取引先は、環境情報を求められる。さらにその先の企業も、少しずつ説明を求められる。こうして、脱炭素はサプライチェーン全体に広がっていきます。

では、対象外の事業者はそのままでよいのでしょうか。答えは、いいえです。制度対象外であることは、環境対応が不要であることを意味しません。むしろ、対象外だからこそ、今のうちに準備する余地があります。

急に義務として迫られる前に、自社の状況を把握しておく。取引先に聞かれる前に、説明できる資料を用意しておく。大きな投資の前に、現場の改善を整理しておく。環境対応をコストではなく、信用づくりとして捉える。これが、これからの中小企業にとって現実的な備え方です。

脱炭素は、どこか遠くの大企業だけが取り組むものではありません。これからは、見積書の外側で始まります。価格の前に信頼が見られ、品質の横に環境対応が並び、納期の裏側で工程の説明力が問われる。そのとき選ばれるのは、完璧な会社だけではありません。自社の現状を把握し、改善の方向を持ち、聞かれたときに誠実に答えられる会社です。

CO₂を測れる会社が、選ばれる会社になる。環境対応を説明できる会社が、取引先に安心を与える。現場の改善を言葉にできる会社が、次の商談で強くなる。排出量取引制度の本格化は、規制の話であると同時に、営業の話でもあります。

環境対応は、もう「余裕があればやること」ではありません。これからは、企業の信用を支える情報になります。そして、その情報をどう整え、どう伝えるかが、取引の継続や新しい提案につながっていきます。

大企業だけの制度だと思っているうちに、取引先から質問が来るかもしれません。そのときに、慌てる会社になるのか。それとも、すでに答えを用意している会社になるのか。準備の差は、やがて営業力の差になります。

環境対応は、営業資料になる。

排出量取引制度の本格化を、自社には関係ない規制として見るのか。それとも、取引先から選ばれるための準備として捉えるのか。その違いが、これからの企業の信用を分けていくのではないでしょうか。

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