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【ecoマ-DX】コラム017 「分かってくれた」と感じる利用者と、「予測している」と説明する技術者。その間にあるもの

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――AIは、あなたの質問に答えているわけではありません。なので・・・

こんにちは。
「エコロジーとエコノミーをビジネス化する」を目標に活動している”ecoだけマーケター“たちが、最近気になる環境やDXにまつわる話題を短く紹介するエコなブログです。「○○したいけど、○○できない」とお悩みの、何かとお疲れ様の皆様に向けて、小さな取り組みなどを紹介します。コーヒーブレイクや休憩の合間にお読みください。

生成AIに、まだ整理できていない考えを入力したことはありませんか。

伝えたいことはあります。けれど、どこから話せばよいのか分かりません。いくつかの事情が複雑に絡み合い、自分でも結論を出せずにいます。そんな曖昧な状態のまま言葉を投げかけても、生成AIは話の筋道を整え、ときにはこちらが言葉にできなかった意図まで先回りするように答えてきます。

「自分が言いたかったのは、まさにこれ!」

そう感じた瞬間、生成AIは単なる検索ツールではなくなります。情報を探す道具というより、話を聞き、一緒に考えてくれる相手のように見えてきます。

ところが、AI技術者は、この体験を少し違った角度から説明します。

生成AIは、人間のように質問の意味を理解し、自分の経験と照らし合わせながら答えているわけではありません。入力された文章と、それまでに学習した膨大な言葉の関係から、次に続く可能性の高い言葉を予測し、回答を組み立てています。

利用者は「分かってくれた」と感じます。技術者は「予測している」と説明します。

同じ現象を見ているはずなのに、両者の間には大きな隔たりがあります。では、私たちが生成AIとの会話で感じる「理解」とは、いったい何なのでしょうか。

AIは、検索するものから対話するものへ変わりました

これまでインターネットで何かを調べるとき、私たちは検索窓にキーワードを入力してきました。表示された複数のページを開き、必要な情報を探し、内容を比較しながら、自分なりの答えを組み立てていました。

検索エンジンが示すのは、答えそのものではありません。答えが書かれている可能性のある場所です。情報を選び、読み解き、結論へつなげる作業は、利用者自身に残されていました。

生成AIは、その関係を変えました。

利用者が曖昧な言葉を入力しても、生成AIは質問の背景を推測し、情報を整理して、一つの文章として返してきます。「企画のアイデアがまとまりません」と伝えれば、考えられる切り口を示し、「このメールを失礼のない表現にしたい」と頼めば、相手との関係まで考慮したような文章をつくります。

しかも、会話を重ねることで回答は変化していきます。「もう少し簡潔に」「経営者向けに」「販促色を弱めて」と伝えれば、直前までの話を踏まえながら調整します。その応答は、検索結果というより、目の前の相手とのやり取りに近いものです。

だから私たちは、生成AIを使っているうちに、「情報を取得している」という感覚よりも、「話を聞いてもらっている」という感覚を持ち始めます。

質問の意図をくみ取り、前の話を踏まえ、こちらの立場に合わせて言葉を選ぶ。励ますように応じることもあれば、別の視点から考えるよう促すこともあります。そこまで自然な応答が返ってくれば、画面の向こうに、自分を理解してくれる何かが存在するように感じても不思議ではありません。

利用者にとって重要なのは、AIの内部で何が起きているかではなく、自分の言葉を受け止め、それに応じた返答が戻ってくるという体験です。その体験が続けば、AIは単なる道具を超え、「対話する相手」として意識されるようになります。なかには、AIを恋人のように親密な存在として受け止める人がいるのも、無理のないことなのかもしれません。

技術者が見ているのは、意味ではなく言葉の関係です

一方、AI技術者が見ている景色は異なります。

生成AIは、文章をそのまま人間と同じ意味のまとまりとして読んでいるわけではありません。入力された文章を細かな単位に分け、それまでの文脈から、次にどのような言葉が続く可能性が高いかを計算しています。

たとえば、「今日は雨が降っているので、傘を」という文章があれば、その後には「持っていく」「用意する」「忘れない」といった言葉が続きやすくなります。私たちも日常的に、文脈から次の言葉を予想しています。

生成AIは、これを人間には到底扱いきれないほど膨大な規模で行います。多くの文章から、言葉と言葉の関係、文章の構造、質問と回答の組み合わせ、場面ごとの表現などを学び、入力された内容に続く可能性の高い回答を生成します。

この説明だけを聞くと、「AIは次の言葉を予測しているだけなのでしょうか」と思うかもしれません。しかし、この「だけ」という表現には注意が必要です。

自然で一貫した長い文章をつくるためには、直前の一語だけを見ていても足りません。文章全体の主題や前後関係、登場人物の立場、会話の目的、言葉のニュアンスまで捉えなければなりません。利用者が何を尋ね、どのような答えを期待しているかも、文脈の中から推定する必要があります。

AI技術者は、これを人間と同じ意味での「理解」と呼ぶことには慎重です。生成AIには、現実世界を生きた経験も、身体を通じて得た感覚も、自分自身の目的もないからです。

しかし、何も捉えていないとも言い切れません。

生成AIの内部には、言葉の使われ方を通して、世界に存在するさまざまな関係がパターンとして取り込まれています。雨と傘、病気と治療、商品と顧客、依頼と配慮。現実を直接経験しているわけではありませんが、人間が現実について書いてきた膨大な文章を通じて、物事のつながりを学んでいます。

私たちが「理解」と呼ぶものと同じではありません。けれど、単純な言葉の並べ替えでもありません。その中間に、生成AI独特の「分かっているように振る舞える能力」があります。

私を知らないAIが、私の意図をくみ取れる理由

生成AIは、なぜこちらの意図を言い当てたような回答を返せるのでしょうか。

その理由の一つは、私たちが考えている以上に多くの情報を、言葉の中に含めているからです。

たとえば、「取引先に送るメールを、失礼のないように修正してください」と依頼したとします。利用者が明示した条件は、それほど多くありません。それでも生成AIは、丁寧な敬語に直すだけでなく、相手を責めるような印象を避け、要望は曖昧にせず、今後の関係にも配慮した文章をつくることがあります。

生成AIが相手企業との関係を実際に知っているわけではありません。過去の取引を見てきたわけでも、担当者の性格を理解しているわけでもありません。

それでも、「取引先」「メール」「失礼のないように」という言葉から、その場面で求められる役割や表現を推定できます。学習してきた膨大な文章の中に、取引先への依頼、謝罪、確認、交渉といった場面で使われる言葉の傾向が含まれているからです。

つまり、生成AIは利用者本人を理解しているのではありません。利用者の言葉に表れた手がかりから、その人が置かれている状況を推定しています。

この推定が当たると、私たちは「そこまで分かってくれた」と驚きます。しかし実際には、AIが見ているのは私たちの内面ではなく、入力された言葉と、それまでの会話です。

だから、同じ生成AIを使っても、人によって得られる回答は異なります。伝えた背景、選んだ言葉、示した条件が違えば、AIが推定する状況も変わります。生成AIが一人ひとりを深く知っているように見えるのは、利用者が差し出した言葉に合わせて、回答の形を変えているからです。

私たちは、AIに自分を理解してもらっているようでいて、実は自分が入力した言葉を、別の形にして返してもらっているのかもしれません。

自然な回答ほど、間違いに気づきにくくなります

生成AIが理解しているように見えること自体が、直ちに問題になるわけではありません。考えを整理したり、視点を広げたりするために、その能力は大きな価値を持ちます。

注意しなければならないのは、私たちが自然な応答を、「内容が正しいこと」や「自分の状況を正確に把握していること」の証拠として受け取ってしまうことです。

生成AIは、質問の中に書かれていない事情を知ることができません。ところが、会話として成立する回答をつくるために、不足している部分を推測して補うことがあります。

その推測が合っていれば、利用者は気の利いた回答だと感じます。外れていれば、本来は違和感を持つはずです。しかし、文章全体が自然で論理的に整っていると、誤った前提が含まれていることに気づきにくくなります。

ここに、生成AI特有の危うさがあります。

明らかに不自然な回答であれば、誰もが疑います。ところが、専門的な言葉が使われ、理由が順序立てて説明され、自分の考えにも合っている回答ほど、私たちは警戒を解いてしまいます。

特に、自分がすでに持っている意見にAIが同意したときは注意が必要です。「AIも同じ考えだった」という感覚が、自分の判断の正しさを補強してしまうからです。

しかし、AIは状況を独立した立場から観察したわけではありません。利用者が入力した情報を主な材料として、それに沿った回答を返した可能性があります。問いの中に特定の見方が含まれていれば、回答もその見方を引き継ぎやすくなります。

生成AIは、客観的な第三者に見えます。だが、実際には私たちの問いを映す鏡として働くことも多くあります。鏡から返ってきた像を見て、「第三者も同じ意見だ」と考えてしまえば、判断はかえって偏ります。

AIの最大のリスクは、間違った回答を返すことだけではありません。納得できる回答の中に、誤った前提が自然に入り込むことです。

技術者は精度を見て、利用者は納得感を見ます

AI技術者は、正答率や再現性、安全性、応答速度など、さまざまな指標を用いて生成AIの性能を評価します。どの程度正しい回答ができるか。危険な内容を適切に避けられるか。同じ条件で、どの程度安定した結果を出せるか。技術として改善するためには、測定できる基準が必要です。

一方、利用者は必ずしも同じ基準でAIを評価していません。

自分の状況に合っているか。話が分かりやすいか。新しい気づきが得られるか。すぐに仕事で使えるか。多くの利用者が見ているのは、技術的な精度だけでなく、回答への納得感です。

そのため、技術的には正確な回答でも、利用者の目的に合わなければ役に立ちません。反対に、唯一の正解ではなくても、考えを整理したり、新しい選択肢を見つけたりするきっかけとして役立つことがあります。

たとえば、企画のアイデアを広げたい場面では、AIに厳密な正解を求める必要はありません。意外な切り口が含まれていれば、多少現実離れしていても発想の刺激になります。

しかし、契約条件や法令、数値、医療、安全に関わる場面では、話が分かりやすいというだけでは足りません。情報源を確かめ、専門家の判断を仰ぎ、最終的な責任を人間が引き受けなければなりません。

生成AIの回答を評価するときに大切なのは、「AIは正しいか」と一括りに考えないことです。何のために使っているのか。間違えた場合に、どのような影響があるのか。後から修正できるのか。用途によって、求める正しさは変わります。

アイデアを出す相手として優秀であることと、事実を保証する相手として信頼できることは同じではありません。私たちは、その二つを意識して分ける必要があります。

必要なのは、質問力よりも距離感です

生成AIの活用法を語るとき、「よい回答を得るには、よいプロンプトが必要です」とよく言われます。確かに、目的や条件を具体的に伝えれば、回答の精度は上がりやすくなります。

しかし、生成AIを仕事や生活の中で使い続けるうえで、より重要なのは、上手な命令文を書く技術だけではありません。必要なのは、AIの回答をどの位置から受け取るかという距離感です。

AIを、正解を知っている先生として扱えば、その回答を無条件に受け入れてしまいかねません。一方で、単なる自動処理装置として扱えば、考えを広げ、まだ言葉になっていない意図を整理する力を十分に生かせません。

現実的なのは、AIを「膨大な言葉とパターンを知っているが、自分の現場を直接は知らない相手」として扱うことでしょう。

AIが示した回答を、そのまま結論にするのではなく、考えるための材料として受け取ります。回答の前提を確かめ、伝えていない事情を勝手に補っていないかを見ます。自分と反対の立場から考えさせ、見落としている可能性を探ります。事実として利用する部分は、情報源や更新時点を確認します。

重要なのは、最初の質問を完璧にすることではありません。返ってきた回答を見て、もう一度問い直すことです。

AIとの対話は、一度の指示で完成品を受け取る作業ではありません。人間が回答を読み、違和感を見つけ、条件を追加し、考えを深めていく往復の中に、本当の価値が生まれます。

よい質問をする力以上に、もっともらしい答えを一度立ち止まって見る力が必要になります。

AIの答えから、人間の問いが始まります

生成AIが人間の言葉を本当に理解しているのか。その問いに、急いで結論を出す必要はないのかもしれません。

少なくとも現在の生成AIは、私たちのように現実世界を生き、痛みや喜びを自分の感覚として受け止めているわけではありません。過去を後悔したり、未来を望んだり、自らの判断に責任を負ったりする存在でもありません。

それでも、私たちの言葉を整理し、考えを広げ、見落としていた選択肢を示すことはできます。自分一人では言葉にできなかった思いや考えが、AIとのやり取りを通して輪郭を持ち始めることもあります。

文章を整え、情報を整理し、選択肢を示すところまではAIに任せられます。しかし、何を伝え、どれを選び、その結果を引き受けるのかは、人間が決めなければなりません。示された情報を事実として採用するのであれば、確かめる責任も私たちの側に残ります。

大切なのは、AIが人間と同じように理解しているかどうかだけではなく、どの能力を信頼し、どの判断を自分の手元に残すかを見極めることです。

AIは、私たちの問いに人間と同じ意味で答えているわけではないのかもしれません。それでも、その言葉を読むことで、自分が本当は何を尋ねたかったのかに気づくことがあります。答えを得たと思った瞬間に、より重要な問いが見えてくることもあります。

AIとの対話で最も価値があるのは、返ってきた答えそのものではありません。そこから、人間の中に次の問いが生まれることなのだと思います。

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