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ecoだけマーケターのエコだけ豆知識 020 化粧品業界に広がる異業種参入

パッケージSDGs

― “作れる時代”に問われる、ブランド事業化の本質

こんにちは。
「エコロジーとエコノミーをビジネス化する」を目標に活動している”ecoだけマーケター“たちが、最近気になる環境やDXにまつわる話題を短く紹介するエコなブログです。「○○したいけど、○○できない」とお悩みの、何かとお疲れ様の皆様に向けて、小さな取り組みなどを紹介します。コーヒーブレイクや休憩の合間にお読みください。

近年、化粧品業界では、これまで美容とは直接結びつきにくいと思われていた異業種企業による新規参入が目立つようになっています。飲料、食品、製薬、写真関連、素材、マーケティング、容器包装、アパレル、サロン、EC、健康食品など、参入企業の出自は実に多様です。

一見すると、これは「化粧品市場が魅力的だから参入が増えている」という単純な話に見えるかもしれません。もちろん、市場の回復や高付加価値商品の需要、D2CやSNS販売の広がり、OEM・ODMの発達といった外部環境は大きな追い風です。しかし、もう少し深く見ていくと、異業種参入の本質は単なる市場参入ではなく、自社が持つ技術・素材・香り・研究・顧客接点・世界観を、美容体験へ翻訳する動きだと捉えることができます。

たとえば、飲料業界で長年培ってきた香りの知見を、飲む体験からまとう体験へ広げる。食品会社が持つアミノ酸、発酵、保湿成分、栄養設計の知見を、スキンケアの価値に置き換える。写真関連企業が持っていたコラーゲン、抗酸化、ナノ技術の研究を、肌の美しさを支える技術として再編集する。製薬系企業が持つ安全性や機能性への信頼を、日常使いのスキンケアへ展開する。

これらはすべて、「化粧品を新しく作った」というよりも、本業で積み重ねてきた資産を、化粧品という生活者接点に変換した事例です。つまり、異業種参入の成功可能性は、化粧品製造の有無だけで決まるのではありません。むしろ、「なぜその企業が化粧品を手がけるのか」が、生活者にとって自然に理解できるかどうかが重要になります。

なぜ今、異業種からの参入が増えているのか

背景には、大きく3つの変化があります。

1つ目は、化粧品が高付加価値化しやすい市場であることです。スキンケア、ヘアケア、フレグランス、メンズケア、サロン専売品、インナーケア連動商品など、化粧品は単なる消耗品ではなく、生活者の価値観や習慣、感情に深く関わる商材です。価格だけで比較される生活用品とは異なり、世界観や体験価値、ストーリーが伝われば、ブランドとして育てていく余地があります。

2つ目は、製造の外部化が進んだことです。現在は、自社で大規模な製造設備を持たなくても、OEM・ODMを活用することで化粧品ブランドを立ち上げることが可能になりました。処方開発、製造、充填、包装、品質管理などを外部パートナーと組み合わせれば、異業種企業でも比較的短期間で商品化に近づけます。これにより、参入のハードルは以前よりも下がっています。

3つ目は、販売チャネルの多様化です。かつて化粧品販売は、百貨店、ドラッグストア、バラエティショップ、訪問販売など、既存流通への参入が大きな壁でした。しかし現在は、EC、SNS、クラウドファンディング、ライブコマース、サロン販売、展示会、コミュニティ販売など、立ち上げ初期でも生活者と直接つながる手段が増えています。大規模流通に乗らなくても、ニッチな顧客層に深く届けるブランド設計が可能になってきました。

この3つが重なったことで、異業種企業にとって化粧品は、単なる新規商品ではなく、既存事業の延長にあるブランド事業として見えやすくなっています。

異業種参入のポジティブな側面

異業種参入の最大の強みは、化粧品専業メーカーにはない「語れる理由」を持っていることです。

化粧品市場では、保湿、透明感、ハリ、ツヤ、香り、自然派、敏感肌、エイジングケアといった言葉があふれています。どれも重要な価値ですが、同時に多くのブランドが似た表現を使っているため、生活者から見ると差がわかりにくいという問題もあります。

その点、異業種企業は本業で培ってきた独自の文脈を持っています。飲料メーカーであれば香りやリラックスの習慣。食品メーカーであれば素材、栄養、発酵、安心感。製薬系企業であれば信頼性、安全性、研究開発。容器包装やマーケティング会社であればパッケージ、表示、売場表現、ブランド設計。サロンであれば顧客の悩みやリアルな使用シーン。

こうした資産は、うまく編集すれば強い差別化要素になります。重要なのは、単に「当社にはこの技術があります」と言うことではありません。その技術や素材が、生活者のどの悩み、どの気分、どの習慣に役立つのかまで翻訳することです。

たとえば、香りの知見を持つ企業であれば、「香りのよい商品を作りました」では弱い。大切なのは、「忙しい日常の中で、気持ちを切り替えるための香り」「強く主張する香水ではなく、自分を整える香り」「飲む体験からまとう体験へ広がる香り」といった生活文脈を設計することです。

食品由来の知見を持つ企業であれば、「食品会社が作った化粧品です」だけでは不十分です。「毎日口にするものを扱ってきた企業だからこそ、肌に毎日使うものにも誠実でありたい」というように、安心感や日常性へ接続する必要があります。

また、異業種企業は既存の顧客接点を持っていることも強みです。食品・飲料・健康食品・サロン・印刷・包装・EC・小売など、それぞれが既に顧客や取引先との関係を持っています。化粧品事業は、そこに新しい提案軸を加えられる可能性があります。既存顧客に対して、新しい体験価値を提供できれば、LTVの向上や新たな収益源の創出にもつながります。

さらに、化粧品はシリーズ展開がしやすい商材です。最初は美容液や香水から始めても、化粧水、クリーム、洗顔、ハンドケア、ヘアケア、ギフト、限定品、サロン専売品などへ広げることができます。単品の売上だけではなく、ブランドとして育てられる余地がある点も、異業種企業にとって魅力的です。

ネガティブな側面と見落とされがちなリスク

一方で、化粧品事業は「作りやすくなった」からこそ、失敗もしやすくなっています。

最も多い落とし穴は、作れることと売れることを混同することです。OEM・ODMを活用すれば、一定品質の商品を作ることは可能です。容器も選べます。成分も選べます。ロゴも作れます。ECサイトも作れます。しかし、それだけで生活者が買う理由にはなりません。

現在の化粧品市場では、似たような処方、似たような容器、似たような世界観の商品が非常に多く存在します。特に、自然派、無添加、オーガニック、敏感肌、エイジングケア、高保湿、透明感といった訴求は、すでに多くのブランドが使っています。これらの言葉を並べるだけでは、後発ブランドは簡単に埋もれてしまいます。

次に大きいのが、法規制と広告表現の問題です。化粧品は、自由に効能をうたえる商材ではありません。医薬品のような効果を想起させる表現や、過度なビフォーアフター、治療・改善を思わせる表現、不確かな優位性の訴求などには注意が必要です。異業種企業の場合、本業の広告感覚をそのまま持ち込んでしまい、意図せず薬機法や景品表示法上のリスクを抱えることがあります。

特にSNS時代は、企業の公式表現だけでなく、インフルエンサー投稿、レビュー、同梱物、LP、広告バナー、店頭POP、営業資料まで一貫して確認する必要があります。企画の最後に法務チェックを入れればよい、という考え方では遅い場合があります。商品コンセプトの段階から、どこまで表現できるのかを確認しながら設計することが重要です。

また、品質管理や責任体制も見落とせません。製造を外部委託したとしても、市場に出る商品としての責任は事業者側にも関わります。万が一、肌トラブルやクレーム、表示ミス、ロット不良が起きた場合、誰がどのように対応するのか。問い合わせ窓口、回収判断、製造記録、成分表示、ロット管理、出荷判定など、表からは見えにくい実務が事業の土台になります。

さらに、初期費用の配分にも注意が必要です。異業種参入では、どうしても商品開発、容器、デザイン、撮影、ブランドロゴに予算が集中しがちです。しかし、発売後に必要になる広告費、サンプル施策、SNS運用、LP改善、CRM、メール・LINE配信、レビュー獲得、リピート施策まで考えておかなければ、発売した瞬間に息切れしてしまいます。

化粧品は、発売して終わりではありません。むしろ、発売してからが本番です。初回購入だけでなく、2回目購入、定期購入、口コミ、紹介、シリーズ購入へつながって初めて事業として成立します。

成功する異業種参入に共通する考え方

異業種から化粧品に参入する際、最初に考えるべきことは「何を作るか」ではありません。最初に問うべきなのは、なぜ自社が化粧品をやるのかです。

この問いに明確に答えられないまま商品開発を進めると、ブランドの芯が弱くなります。

「市場が伸びているから」
「OEMで作れるから」
「自社ブランドを持ちたいから」
「美容領域が話題だから」

これらは企業側の理由であり、生活者が買う理由ではありません。生活者に届く理由に変換するには、本業の資産と美容体験をつなぐ必要があります。

たとえば、香りに強みがある企業なら、香水を作ること自体が目的ではなく、「香りによって日常の気分を整える」体験を提供する。食品素材に強みがある企業なら、成分を入れること自体ではなく、「毎日使い続けたくなる安心感や肌との向き合い方」を提案する。包装や印刷に強みがある企業なら、容器や箱を作ることではなく、「手に取った瞬間にブランドの価値が伝わる接点」を設計する。

このように、本業の強みを美容体験へ変換する編集力が、異業種参入の成否を分けます。

商品設計より先に、想起シーンを設計する

化粧品事業で重要なのは、生活者がどの瞬間にそのブランドを思い出すかです。

たとえば、香りの商品であれば、「良い香りがする」だけではなく、どんな時に使いたくなる香りなのかを設計する必要があります。仕事前に気持ちを整えたい時。帰宅後に緊張をほどきたい時。人と会う前に自分らしさをまといたい時。眠る前に一日を切り替えたい時。こうしたシーンが明確になるほど、商品は単なる香りではなく、生活の中の役割を持ちます。

スキンケアであれば、「乾燥が気になる」「年齢サインが気になる」「肌がゆらぎやすい」といった悩みだけではなく、その悩みが発生する生活場面まで考える必要があります。朝のメイク前なのか、夜の入浴後なのか、季節の変わり目なのか、マスクや外気の影響なのか、仕事や育児で自分のケアが後回しになっている時なのか。使用シーンが具体化されるほど、ブランドの言葉も具体的になります。

この想起シーンの設計は、カテゴリーエントリーポイント(CEPs)とも言えます。生活者が商品カテゴリーを思い出す入口を、ブランド側が先に設計しておくという考え方です。後発ブランドほど、ここを曖昧にしてはいけません。

OEM任せではなく、ブランド設計を自社で握る

OEM・ODMは、異業種参入において非常に重要な存在です。専門知識を持たない企業にとって、処方開発や製造、品質管理の面で大きな支えになります。しかし、OEM・ODMに任せればブランドが成功するわけではありません。

OEMが担うのは主に、作る機能です。一方で、売れる理由、選ばれる理由、続けてもらう理由は、ブランド側が設計しなければなりません。

誰に向けた商品なのか。
どの悩みや欲求に応えるのか。
なぜその企業が出す意味があるのか。
どの販売チャネルで届けるのか。
初回購入後にどう継続してもらうのか。
どんな言葉なら法規制に配慮しながら魅力を伝えられるのか。
パッケージ、LP、SNS、広告、同梱物、店頭表現に一貫性があるか。

これらは、製造だけでは解決できない領域です。特に異業種企業の場合、本業の強みを化粧品の価値に翻訳するプロセスが不可欠です。ここを外部に丸投げしてしまうと、どこかで見たような商品、どこかで聞いたようなコピー、どこかで使われているような容器になりやすいのです。

パッケージは“最後の箱”ではなく、最初のブランド接点

化粧品事業において、パッケージは単なる容器や箱ではありません。生活者が最初にブランドの価値を判断する重要な接点です。

特に異業種参入では、「なぜこの会社が化粧品を出すのか」を短い時間で伝える必要があります。店頭でもECでもSNSでも、生活者は一つの商品に長い時間をかけてくれません。だからこそ、パッケージには、ブランドの思想、使用シーン、価格帯、安心感、世界観、成分の意味、ギフト性、継続使用のしやすさまで凝縮する必要があります。

また、化粧品パッケージには表示義務や法規制も関わります。美しさだけを追求すればよいわけではなく、必要な情報を正しく、わかりやすく、ブランドの世界観を壊さずに伝える設計が求められます。容器選定、外箱、ラベル、説明書、同梱物、配送箱まで含めて、生活者体験として一貫させることが大切です。

さらに、今後は環境配慮も無視できません。過剰包装を避ける、分別しやすい設計にする、素材を見直す、詰め替えや再利用の可能性を考えるなど、サステナブルな視点はブランド価値の一部になりつつあります。環境対応はコスト要因である一方、ブランドの姿勢を伝える大切な要素にもなります。

事業化のポイントは、発売前に“発売後”を設計すること

異業種参入で失敗しやすい企業は、発売日をゴールにしてしまいます。しかし、化粧品事業では、発売日はスタートラインです。

発売前に設計しておくべきことは多岐にわたります。

まず、初回購入の入口です。SNSで認知を取るのか、展示会で接点を作るのか、サロンで体験してもらうのか、EC広告で獲得するのか、既存顧客に案内するのか。入口によって、必要なメッセージも価格設計も変わります。

次に、購入前の不安解消です。化粧品は肌に使うものなので、生活者は成分、使用感、香り、刺激、価格、口コミ、返品対応などを気にします。LPやパンフレット、FAQ、レビュー、動画、サンプルなどで、どの不安をどう解消するかを考える必要があります。

そして、初回使用後のフォローです。使用方法がわかりにくければ継続されません。適量、タイミング、併用方法、使用順、香りの楽しみ方、保管方法などを丁寧に伝えることが、2回目購入につながります。

さらに、リピート導線も重要です。メール、LINE、同梱物、定期便、クーポン、レビュー依頼、季節提案、シリーズ提案など、購入後の接点を設計しておかなければ、せっかく獲得した顧客が離れてしまいます。

化粧品事業は、商品開発、販売、広告、CRM、品質対応が分断されると弱くなります。事業化の初期段階から、これらを一つの流れとして設計する必要があります。

異業種参入で勝てる企業、失敗しやすい企業

異業種参入で勝てる企業には共通点があります。

それは、自社の強みをそのまま押し出すのではなく、生活者にとって意味のある美容価値に変換できることです。技術がある、素材がある、歴史がある、販路がある、顧客がいる。それだけでは不十分です。それらを、生活者の悩みや願望、日常の行動に結びつけられるかどうかが重要です。

勝てる企業は、以下の問いに答えられます。

なぜ自社が化粧品を出すのか。
誰の、どんな生活場面に入り込むのか。
既存ブランドでは満たされていない不満は何か。
自社の資産は、どの美容体験に変換できるのか。
初回購入後、どう継続してもらうのか。
法規制に配慮しながら、どう魅力を伝えるのか。
商品、パッケージ、売場、EC、SNS、同梱物に一貫性があるか。

一方で、失敗しやすい企業は、次のような考え方に陥りがちです。

OEMで作れば売れる。
有名成分を入れれば売れる。
高級感のある容器にすれば売れる。
SNSで話題になれば売れる。
既存顧客に案内すれば買ってくれる。
本業の知名度があるから信頼される。

これらは一部正しい面もありますが、それだけではブランドは育ちません。生活者にとっての購入理由、継続理由、紹介理由まで設計されていなければ、発売後に伸び悩む可能性が高くなります。

“作る”から“育てる”へ

異業種からの化粧品参入は、今後も続くと考えられます。市場の魅力、OEM・ODMの発達、SNS・ECの広がり、生活者ニーズの細分化、企業資産の再活用という流れは、簡単には止まりません。

しかし、参入企業が増えるほど、単に商品を作るだけでは差別化が難しくなります。これから問われるのは、化粧品を作る力ではなく、ブランドとして育てる力です。

そのためには、商品企画、処方、パッケージ、表示、法規制、販売導線、広告表現、CRM、顧客対応、口コミ設計までを一体で考える必要があります。どれか一つが優れていても、全体がつながっていなければ事業としては弱くなります。

特に異業種企業にとって重要なのは、本業の資産を過信しないことです。知名度や技術は強みになりますが、それだけで生活者が買うわけではありません。生活者が求めているのは、企業側の都合ではなく、自分の生活に意味がある商品です。

だからこそ、異業種参入の本質は、化粧品を作ることではありません。

自社が持つ資産を、生活者が毎日使いたくなる美容体験へ翻訳すること。

この視点を持てる企業は、化粧品市場において独自のポジションを築ける可能性があります。一方で、この翻訳を怠れば、どれだけ品質の高い商品であっても、数あるブランドの中に埋もれてしまいます。

化粧品業界への異業種参入は、単なる新規事業ブームではありません。それは、企業が持つ技術、素材、香り、信頼、顧客接点、デザイン力、表現力を、生活者の感情や習慣に接続し直す挑戦です。

これからの化粧品事業に必要なのは、商品を完成させる力だけではなく、選ばれる理由を設計し、使い続けられる体験をつくり、ブランドとして育てていく力です。

異業種からの参入が増える今だからこそ、化粧品事業は「作れば売れる」時代から、「意味が伝わるものだけが残る」時代へ移っています。

異業種からの参入が増えるほど、化粧品業界には新しい視点やアイデアが流入します。一方で、ブランドとして生活者に受け入れられるためには、商品企画、表示、パッケージ、販促、販売導線、継続購入設計まで、化粧品事業ならではの丁寧な設計が欠かせません。

こうした課題に向き合うため、当社では今年1月、化粧品領域における企画・パッケージ・販促・共創支援の取り組みとして「CoreだけCOSME」を立ち上げました。

化粧品メーカー様におかれましても、外部パートナーとの協業、新たな企画開発、展示会・営業資料・販促物の整備、ブランド表現の見直しなど、周辺領域からご一緒できることがあると考えています。

これまで培われてきた知見や品質を尊重しながら、生活者により伝わるかたちへ整える。
そのための企画・表現・パッケージ・販促設計のパートナーとして、CoreだけCOSMEをご活用いただければ幸いです。

CoreだけCOSME:https://www.naganae.co.jp/coredakecosme/

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