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【ecoマ-DX】コラム015 【人手不足解消2】ひらけ、未来の扉。──AIが拓く化粧品研究開発の新時代──

DX

こんにちは。
「エコロジーとエコノミーをビジネス化する」を目標に活動している”ecoだけマーケター“たちが、最近気になる環境やDXにまつわる話題を短く紹介するエコなブログです。「○○したいけど、○○できない」とお悩みの、何かとお疲れ様の皆様に向けて、小さな取り組みなどを紹介します。コーヒーブレイクや休憩の合間にお読みください。

ひらけ、未来への扉(まとめ記事)

AI技術が化粧品開発に深く浸透しつつあります。既に複数の企業が研究段階からAIを導入し、処方探索・評価・製造・消費者体験に至るまでのプロセスを変革しつつあります。 

具体的には、処方探索の高速化からパーソナライズソリューション、サステナビリティ設計まで、研究開発(R&D)のさまざまなプロセスでAI活用が進み始め、開発者と消費者に多彩な恩恵をもたらしています。処方の候補を素早く絞り込む、評価を客観的に支える、製造のムダを減らす、体験価値を高める——こうした流れが研究段階から店頭・オンラインまで一本の線になりつつあります。かつては研究者の経験と直感に大きく依存していた領域に、データとアルゴリズムが組み込まれることで、効率と創造性が同時に拡張されているのです。

ただ、その裏には、「データの偏り」「過度な期待」「プライバシー懸念」などの影も存在します。本稿では両面から具体的に探りつつ、未来に少しずつ幸せを積み重ねるための処方箋を、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。

日本企業の挑戦 ― 経験とデータのハイブリッド化

国内の多くの研究現場では、ベテランの暗黙知と実験データを組み合わせて、処方探索の遠回りを減らすアプローチが広がっています。 感覚に頼りがちな評価(たとえば肌の印象変化)も、画像・計測・言語データを用いて見える化するなど、評価の再現性が上がれば、試作の回数やリードタイムは自然とスリムになります。 さらに、分野横断の知見を社内で共有しやすくする“ナレッジ基盤”づくりも進み、「人に依存しすぎないR&D」へのシフトが各所で見られます。

ピックアップ事例 ポーラ化成「AIMPOLAR」

他にも、各社がいろいろな取り組みを進めていますが、全てを紹介するのは膨大な情報量になるため、またの機会にご紹介します。

グローバル企業の潮流 ― R&Dを加速させる生成AIと自動化

海外では、生成AIを研究・評価・企画に横断的に使う基盤化が進行中です。
試験計画のシミュレーションや、結果の自動解析、消費者の声のリアルタイム集約など、研究室と市場の距離を縮める工夫が目立ちます。
香料や素材の分野では、ロボティクスとAIを組み合わせた自動試作ラインの導入も一般化。単純作業を機械に任せ、研究者は仮説づくりと検証ストーリーの設計に集中するスタイルが定着しつつあります。

事例 P&G

P&Gは、OlayなどのブランドでAIを使った肌診断スキンケア・アドバイザー・サービスを展開。研究者は消費者から得られる膨大な肌データを即時に分析し、商品開発に反映できることで、研究と消費者体験を直結させています。※   

香料開発 ― 調香師とAIの共創

香りの設計は「芸術」と呼ばれる領域ですが、ここにもAIが補助的に導入されています。

AIが新しい香料の処方を提案し、持続可能性や消費者嗜好を考慮したり、AIが候補を作成し、調香師はそこから発想を広げることに役立ったり、中小ブランド向けにAIプラットフォームを開放し、誰でも香り開発に参加可能になったりと、使い勝手が広がります。

ここで重要なのは「AIが香りを作る」のではなく、AIが“調香師のパートナー”になること。職人技を補い、発見を加速する役割です。

安全性・規制対応 ― AIが担う説明責任

化粧品開発では安全性評価が欠かせません。
機械学習を用いた刺激性予測モデルなど、動物実験の代替として注目されています。EUでも新AI規制(AI Act)が施行され、AIを使う場合には「データの質」「人間の監督」「結果の透明性」が必須となります。

安全性評価や表示・広告の妥当性は、これまで以上に説明責任が求められます。 AIは、既存のデータからリスクの予兆を早めに示し、評価プロセスの記録を整えるのに向いています。「AIに任せたので正しいだろう」ではなく、人の監督と検証が前提です。最初から「説明するつもりで設計する」姿勢が、結果としてスムーズな規制対応につながります。

つまりAIは効率化ツールであると同時に、規制遵守と説明責任を果たすためのパートナーにもなっているのです。

マイクロバイオーム×AI ― 肌の“新しい地図”

近年注目されるマイクロバイオーム研究では、AIが大量の菌叢データを解析し、肌状態と成分の相関を明らかにしています。肌状態と原料効果の関係を可視化したり、肌菌叢に基づく新しい「肌タイプ」分類を提案したり。従来の「乾燥肌・脂性肌」といった分類を超え、菌叢ベースでの新しいスキンケア設計が可能になります。

開発者側にもたらされる恩恵

消費者側にもたらされる恩恵

その一方で――デメリットとリスクも忘れずに

少しずつ幸せになるための処方箋:未来に向けて

AI活用が進むことで、化粧品研究開発は次のステージへ移行します。

  1. 自律型ラボ
    AIが仮説を立て、ロボットが自動で試作し、結果をAIが学習。研究サイクルが“自走”する研究所が現実になりつつあります。
  2. 処方と環境対応の同時最適化
    処方の安定性・官能性だけでなく、環境負荷(CO₂排出や生分解性)を同時に評価する設計が当たり前になります。
  3. 個別化の量産化
    消費者ごとの肌データを即座に解析し、パーソナライズ製品を効率的に製造。これにより「誰もが自分専用の化粧品」を手にできる時代が来ます。

● 処方箋1:データの多様性を担保する

肌トーン・性別・年齢層など多様なデータをAIモデルに学ばせ、公平で正確な処方提案や評価を目指す。「暗い肌で精度が落ちる」ような偏りを避けることが、まず最初の処方です。

● 処方箋2:データプライバシーと透明性を重視する

顔・肌・DNAなど高度にセンシティブな情報を扱う以上、本人同意、匿名化、データ管理体制、情報開示などを厳格にする必要があります。

● 処方箋3:人間らしさを保つAI設計

AIの出力を通じて「美の自信を後押しする」ような設計――ネガティブな自己評価を招かない表現やUI構造を導入し、心理的負担を最小限にするアプローチが求められます。

● 処方箋4:AIの活用を段階的に、かつ説明可能に

“AIワッシング”を避け、どこでAIを用い、どこは人が判断したのか、という透明性を消費者に示す。AI利用範囲を明示し、信頼を積み重ねることが重要です。

● 処方箋5:従業員への再学習とキャリア移行を並行

自動化によって生じる職務変化に備え、従業員がAIを使いこなす研修や、新たな創造的価値創出に関わるキャリア設計を支援する体制を整備しましょう。


まとめ:幸せは少しずつ、AIと共に広がる

AIは、化粧品開発者には「効率・創造・精度の向上」をもたらし、消費者には「自分に合った製品・透明性・新しい体験」を届ける「共創のパートナー」です。効率・透明性・持続可能性を同時に追求することで、化粧品産業は一歩先の未来へ踏み出しています。ただし、偏見・心理リスク・プライバシー・誤認などの課題も併存します。

だからこそ、この技術は「正しく使えば幸せを積み重ねられる処方箋」です。
多様性を守る、安心の仕組みを構築する、人間らしさを尊重する――そんな理念をもとにAIと向き合えば、未来の美しさは、誰もが少しずつ幸せになれるかたちで届くはずです。


参考文献・引用元:

  • McKinseyによる生成AI導入で新製品研究の時間・コスト削減 McKinsey & Company
  • Albert InventのAIプラットフォーム「Albert」が1,500万以上の分子データから処方候補を提示 Business Insider
  • AmorePacificのAIを使ったファンデーション即時調合システム Reuters
  • FlorasisのAIスマート工場による品質・生産効率の向上と環境配慮 Vogue Business
  • バーチャル試着・パーソナライズ化粧品の普及とインサイト ijrpr.comtangent.aiprofiletree.com
  • AIによるアレルゲン検出の可能性 Cureus
  • AIパーソナライズが消費者の購入意向とブランドロイヤルティを高める ijhssm.org
  • 肌トーンによるAI精度の偏差と改善策 arXiv
  • 顔評価AIが引き起こす心理的影響 arXiv
  • プライバシー・偏見・誤情報などへの懸念 stylerave.comijrpr.comCosmeticsDesign.com
  • “AIワッシング”の現状と消費者の不信感 Allure
  • AIによる業務自動化が雇用に与える影響 MHA

ご希望があれば、そこに御社独自の現場や製品を組み込んで、より具体的な処方箋に仕立てることも可能です。

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