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「エコロジーとエコノミーをビジネス化する」を目標に活動している”ecoだけマーケター“たちが、最近気になる環境やDXにまつわる話題を短く紹介するエコなブログです。「○○したいけど、○○できない」とお悩みの、何かとお疲れ様の皆様に向けて、小さな取り組みなどを紹介します。コーヒーブレイクや休憩の合間にお読みください。
今回はSBTi認定について
このコラムでは、SBTi認定が企業のサステナビリティ戦略においてどのような重要な役割を果たすかを解説します。 気候変動に対する科学的アプローチ、認定取得のプロセス、および成功事例など、企業がどのように環境への影響を最小限に抑えながらビジネスを展開できるかどうかを調査します。
「SBTiとは何か:基本的な理解」
地球温暖化の影響は、全世界で目に見える形で現れており、気候変動によるリスクは今後さらに増大することが予想されます。この危機的状況に対処するため、企業はその社会的責任を果たすべく、積極的な温室効果ガス削減に取り組む必要があります。SBTは、このような削減目標を科学的な根拠に基づいて設定し、具体的な行動を促すためのフレームワークを提供します。
SBTiとSBTの違い
SBTi(Science Based Targets initiative)とSBT(Science Based Targets)はよく似た用語ですが、意味する内容には重要な違いがあります。
SBT(Science Based Targets)
SBTは、その名の通り「科学的根拠に基づいた目標」自体を指します。これは具体的に企業が設定する温室効果ガスの削減目標のことで、SBTiによって認定された目標がSBTと呼ばれます。
SBTi(Science Based Targets initiative)の概要と目的
SBTiは、企業が科学的根拠に基づいて気候変動に対応する目標を設定するための国際的なイニシアティブです。この取り組みは、パリ協定の目標に沿って、温暖化を産業革命以前の水準よりも2℃未満、できれば1.5℃未満に抑えることを目指しています。SBTiは、企業が自社の温室効果ガス排出量を科学的に分析し、長期的に持続可能なレベルまで削減するための具体的な目標を設定することを支援しています。目標は、独立した専門家によって評価され、参加承認されます。SBTiになることで企業は、気候変動対策へのコミットメントを公表し、透明性と信頼性を高めることができます。
簡単に言うと、SBTiは目標をサポートする団体であり、SBTはその団体によって認定される具体的な削減目標です。
当社、長苗印刷株式会社も(本社所在地:愛知県春日井市、代表取締役社長:長苗 宏樹)は2023年12月7日にグローバル・スタンダードであるScience Based Targets イニシアチブ (SBTi) 1の認定2を取得いたしました。
世界の平均気温の上昇を1.5度に抑えるという世界全体での目標達成に向けて、2030年までに温室効果ガスの排出量を半減し、2050 年までに正味ゼロの排出量にすることが必要になっています。
温室効果ガスの排出者である企業がサプライチェーン全体での排出削減が求められていく中で積極的に削減へ向けた取り組みの重要性が増しています。
長苗印刷では、どれだけの量の温室効果ガスをいつまでに削減しなければいけないのか、科学的知見と整合した目標を設定し、排出削減に向けて進めてまいります。
*1
Science Based Targetsイニシアティブとは、CDP、国連グローバル コンパクト、世界資源研究所 (WRI)、世界自然保護基金 (WWF) の協力して運営する国際機関で、企業が最新の気候科学に沿って積極的に温室効果ガス排出削減目標を設定できるように設立されました。
科学に基づく目標設定のベストプラクティスを定義および促進し、認証取得の採用障壁を減らすためのリソースとガイダンスを提供し、企業の目標を評価および承認しています。
*2
SBTi認定は、パリ協定に沿った科学的知見と整合した目標設定の方法として、世界中で既に多くの企業が認定を受けています。また、気候変動対策の必要性の高まりを受けて、投資家や消費者も企業の排出削減目標の有無を重視し始めていて、SBT認定の有無が重要な指標のひとつとなっています。
気候変動と企業の役割
企業活動は、特に温室効果ガス排出の主要な排出源として、気候変動に大きく関係しています。そのため、企業は気候変動対策において重要な役割を担っています。SBTiでは、企業は自社の環境への影響を科学的に評価し、温暖化防止に向けた具体的な行動計画を立てることが求められます。これには、エネルギー効率の改善、再生可能エネルギーへの移行、サプライチェーン全体の排出削減などが含まれます。
認定に向けた準備
SBTiの認定を取得するための準備プロセスは、まず企業が自身の現状を正確に理解することから始めます。これには、自社の温室効果ガス排出量を全面的に測定し排出源を、直接排出(スコープ1)、間接排出(スコープ2)、およびサプライチェーンを含む間接排出(スコープ3)の全体像を把握する必要があります。また、企業は内部で気候変動に対するコミットメントを固め、目標達成に向けた組織全体の取り組みを計画する必要があります。
SBTiによるネットゼロ基準
多くの国や企業がネットゼロ目標を掲げ始めていますが、具体的にいつまでにどれだけ削減すればネットゼロと言えるのか、統一的な基準がありませんでした。そのような中で、SBTiは2021年10月、企業による⾧期のネットゼロ目標の基準を発表しました。1.5℃目標達成の確率が最も高いと予測される削減量を基に作成され、Scope1/2(自社の排出)に加え、Scope3(サプライヤーや消費者、顧客などの排出)も対象となりました。この基準に合致する目標を掲げる企業は、ネットゼロを目指す企業であることを示す認定を与えられ、2023年1月10日時点で日本企業では6社が認定18)を受けています。認定を得るためには、主に以下4つの必須要件を充たす必要があります。
①短期SBTの設定
1.5℃ラインに沿った5 -10年間のGHG削減目標として、Scope1/2の合計を年率4.2%、Scope3は年率2.5%の総量による削減が必要です。また、短期目標日に達した場合は、⾧期目標に向けたマイルストーンとして新たな短期目標の設定が必要となります。
②⾧期的なSBTの設定
2050年(あるいはそれ以前まで)に、1.5℃ラインにおいてネットゼロを達成するGHG排出削減目標として、Scope3では90%以上の排出削減を実施する必要があります。また、ネットゼロ時点に至るまで1.5℃ラインに沿って削減しなければなりません。なお、目標達成時とそれ以降について、残る未削減の排出量(残余排出量)を③中和することも認められています。
③ネットゼロにするための残余排出の中和
企業は、未削減の排出である残余排出の影響を相殺するために、大気中から炭素を除去し、永続的に貯蔵すること(炭素除去)ができます。ただし、中和(残余排出量を炭素除去で相殺すること)ができる残余排出量は、総排出量の約10%未満です。
④バリューチェーンを超えた緩和(BVCM9)
ネットゼロに向け、目標設定だけでなく、企業は自社のバリューチェーン外にて、GHG排出削減のための取組や投資をすべきです。例えば、GHGの排出を回避/削減、高品質の管轄区域内REDD+10クレジットの購入、埋立地ガスプロジェクトへの投資、大気中からGHGを除去して貯蔵、直接空気回収(DAC11)や地下貯蔵への投資などがあります。なお、他にも企業が遵守すべき推奨事項があるため、詳細はSBTi企業ネットゼロ基準19)を参照してください。
これらはあくまでも現時点での基準です。2022年3月31日に、企業・投資家・自治体によるネットゼロ宣言について、より強力かつ明確な基準を策定し、その実施を加速するため、国連において「非国家主体のネットゼロ宣言に関する専門グループ」が発足されました。その専門家グループにより、COP27では企業や自治体が「ネットゼロ目標」を掲げる際、誤った主張・曖昧さ・グリーンウォッシュを防ぐための原則と提言が提出されました。提言の中では、より踏み込んだネットゼロ基準が求められており、今後基準改定を注視していく必要があります。
- “9 Beyond Value Chain Mitigation
- 10 REDDは「Reducing Emissions from Deforestation and Forest Degradation in Developing Countries(森林減少・劣化からのGHG排出削減)」の略称です。REDD+は、森林減少・劣化の抑制に加え、森林保全、持続可能な森林経営及び森林炭素蓄積の増加に関する取組を含みます。
- 11 Direct Air Capture” 出展:環境省
目標の提案と評価のプロセス
この目標の提案には、企業が設定した目標、目標達成に向けた具体的な戦略、および目標を科学的根拠に基づいていることを示す詳細なデータと分析が含まれる必要があります。SBTiからのフィードバックを受けて、必要に応じて企業は目標を調整し、再提出します。SBTiの専門家による詳細なレビューと評価を経て、提案された目標が科学的根拠に基づき、パリ協定の目標と一致していると判断すれば、認定が与えられます。この認定プロセスは、企業が持続可能な経営を行うため重要ですなステップであり、環境保護への責任とともに、透明性と信頼性を市場に向けて示すことができます。
SBT申請の流れ
①コミットメントレターの提出(任意)
・これは、2年以内にSBTを設定するという公式な宣言です。
・提出されると、SBT事務局やCDP、WMBのウェブサイトで公表されます。
②目標の設定と申請書の提出
・「Target Submission Form」という申請書を事務局に提出します。
・SBTiの予約システムを通じて、審査日を予約します。
③目標の妥当性確認
・SBT事務局が、提出された目標が基準に合致しているかを審査し、結果をメールで通知があります(有料)。
・目標が認められなかった場合は、その理由も含めて回答があります。
④認定後の公表
・目標が認定された場合、その情報はSBTなどの関連ウェブサイトに公表されます。
⑤進捗の報告と開示
・認定後は、温室効果ガスの排出量と削減対策の進捗を毎年報告し、公開します。
⑥目標の定期的な再評価
・大きな変化が生じた場合は、必要に応じて目標を再設定します。
・少なくとも5年に1度は目標を再評価することが求められます。
SBTに取り組むメリット
SBTを設定することは、企業が投資家、顧客、サプライヤー、社員などのステークホルダーに対して、自社が持続可能な経営を行っていることを明確に示す手段です。この取り組みにより、企業の評価が向上し、リスクが低減され、新たなビジネスチャンスを掴む機会が増えることが期待されます。
また、SBTは気候科学に基づいた共通の基準で設定され、認定された目標です。このため、企業がパリ協定に準拠していることを、誰もが理解しやすくなっています。この共通基準に基づく認定を受けることで、企業は持続可能なビジネスの姿勢を国際的にもアピールすることができます。
・SBTという意欲的な削減目標は、省エネ、働き方改革、業務効率化等の生産性向上推進の動機づけとなる
・生産性向上に向けた取組の一つとしてとらえることで、成果指標としてSBT を活用できる
・海外では再エネ調達がコストメリットを有する場合も出始めている。積極的な再エネの導入がコスト削減につながる可能性がある。自社のエネルギー調達を安価でクリーンなものにするために、SBT を利用したい企業もある
・SBTで求められる水準の削減は、既存の技術のみで実現できるものは少ない。AI 、IoT などの新たなテクノロジーをいち早く取り入れイノベーションを促進することができる
・脱炭素化の潮流を踏まえた新たな事業モデルを見出せることも
SBTは、企業内のエネルギー削減取り組みを強力に推進します。この野心的な削減目標は、社内での省エネルギー活動や再生可能エネルギーの導入を促し、これらが成果指標として機能します。省エネと再エネの積極的な導入は、コスト削減だけでなく、イノベーションの促進にもつながります。
SBTを設定することで、省エネ、労働環境の改善、業務効率化など、生産性を高める多くの取り組みに対する動機付けが生まれます。SBTは生産性向上の取り組みとして捉えられ、具体的な成果指標として活用されるようになります。
また、国際的に見ても、再生可能エネルギーの調達はコスト面でのメリットが増えつつあります。企業はコストを抑えつつ、よりクリーンなエネルギー源へと移行することが可能です。さらに、SBTは最新技術の導入を促進する要因ともなり、AIやIoTなどの先進技術を活用することで、削減目標の達成だけでなく、イノベーションの推進も見込めます。
このようにSBTは、脱炭素化の流れの中で新しいビジネスモデルを見出すチャンスを提供し、企業が持続可能な成長を遂げるための重要な手段となります。
サプライチェーンは、物理的リスク、評判リスク、規制リスクといったさまざまなリスクに晒されています。これらのリスクを軽減するためには、サプライヤーに対して環境対策を行うことが求められます。
サプライチェーンを取り巻く主なリスク
・物理的リスク
サプライチェーンの中断リスク:気候変動、自然災害、事故、原材料の価格高騰などにより、サプライチェーンが寸断される可能性があります。
・評判リスク
投資家や消費者の目:企業の管理体制や環境への配慮が不十分であると見なされると、企業の評判に悪影響を与えることがあります。特に、企業のサプライチェーンにおける排出量(Scope 3)の開示は、投資家による評価の対象となり得ます。
・規制リスク
法規制とコンプライアンス:新たな環境規制への適応が求められる場合、法規制に対応するためのコストが発生することがあります。
これらのリスクに対処するためには、サプライヤーに対して環境に配慮したビジネス実践を促すことが重要で、リスクの低減だけでなく、サプライチェーン全体の持続可能性を高めることができます。
目標達成に向けた削減策を検討する
step1 削減策の考え方の原則
1. 全社的な広い視野で取り組む
効果的な削減策を策定するためには、まず全社的な視野から持続可能な事業のあり方を検討することが重要です。これには、社会が脱炭素に向かう大きな動向を理解し、その中で自社がどのように存在し続けるかを想像することから始めて、その上で、具体的な部門や現場レベルでの削減策を考えていきます。このような根本的な変革を成功させるには、経営層の強いコミットメントが不可欠です。
2 短期/中長期の双方の視野で検討する
削減策を考える際、しばしば短期的で具体的な取り組みに焦点が当たりがちです。しかし、SBTのような大きな目標を達成するためには、将来の大きな社会変化を見据えた中長期的な視野が必要です。これには、企業が将来どのような存在であるべきかを基に、バックキャスト(未来から逆算)型の発想で計画を立てることが求められます。このアプローチにより、企業は単なる短期的な改善ではなく、将来にわたって持続可能な事業構造へと大きく転換するための戦略を練ることができます。
step2 Scopeごとの考え方
3. Scope1/2の削減策を検討する
企業が自らのビジネスモデルや運用プロセスを持続可能で環境負荷の小さいものへ変革するためには、現在のマテリアルフロー(物資の流れ)とエネルギーフロー(エネルギーの流れ)を見直すことが効果的です。このプロセスでは、物資やエネルギーの供給がどのように行われているかを上流から詳細に調査し、より効率的かつ環境に優しい方法へと改善を図ります。
具体的には、使用する材料の種類や量を最適化すること、また、エネルギー消費を抑えるための設備更新や運用改善を行います。このようにして、最も望ましいエネルギー供給の形態を実現し、全体としての環境負荷を低減することが目標です。
4. Scope3の削減策を検討する
Scope 3の削減策を検討する際には、自社の直接的な活動を超えた、サプライチェーンや製品の使用に関わる排出を考慮する必要があります。このため、Scope 1/2での削減よりも複雑で、外部のステークホルダーとの連携が必要とされます。削減策の策定には以下の5つの主要なアプローチがあります。
1.グリーン調達:環境に配慮した材料やサービスを優先して購入し、サプライヤーにも環境基準を求めること。
2.サプライヤーエンゲージメント:サプライヤーと協力して、彼らの運用や製品製造プロセスでの環境負荷を低減する方法を模索すること。
3.製品・サービスのデザイン変更:製品の設計を見直し、環境に優しいものに変えることで、製品の使用段階での排出削減を図ること。
4.オペレーションの改革:物流や製造過程などのオペレーションを効率化し、排出を削減すること。
5.顧客との協働:顧客に製品の効率的な使用やリサイクルなど、環境負荷の低減を促す協力を求めること。
これらのアプローチを通じて、自社だけでなく、サプライチェーン全体の持続可能性を高めることができます。
5. サプライヤーによるGHG排出削減の取組を後押しする
Scope 3は、自社以外の企業がバリューチェーン上で排出している温室効果ガスに関連しており、その削減はサプライヤーの協力が不可欠です。この目標達成をサポートするためには、自社の調達活動を工夫し、サプライヤーに排出削減を促す必要があります。この取り組みには以下の三つの主要な戦略が含まれます。
1.グリーン調達:環境に配慮した製品やサービスを積極的に選び、サプライヤーにも同様の基準を求めることで、全体の排出量を削減します。
2.サプライヤーエンゲージメント:サプライヤーと協力し、彼らの排出削減努力をサポートします。この協力には、共同での削減目標設定や、排出削減技術の共有などが含まれます。
3.サプライヤーの評価/インセンティブの付与:環境への取り組みを積極的に行うサプライヤーを評価し、インセンティブを提供することで、彼らが排出削減にさらに積極的に取り組むよう動機づけます。
これらの戦略を通じて、サプライヤーによる温室効果ガスの排出削減を促し、持続可能なサプライチェーンの構築を目指します。
step3 優先順位付け
6. 各削減策の優先度を判定する
削減策のリストが整った後は、それぞれの削減策に優先度をつける作業が必要です。これには、削減インパクト(影響の大きさ)とフィージビリティ(実現可能性)の二つの基準で評価を行います。削減策の優先順位を決めることで、どの策をいつ、どのように計画に組み入れるかを明確にします。
削済みインパクトが大きい策でも、フィージビリティが低い(つまり実現が難しい)場合、その策は既存の事業活動やステークホルダーに大きな影響を与える可能性が高いため、長期的な取り組みが必要になることが多いです。このような策は、中長期の計画でじっくりと取り組むべきと考えられます。
このプロセスを通じて、最も効果的で実現可能な削減策を戦略的に選択し、企業の環境目標達成に向けた計画を具体化します。
7. ネットゼロに向けて追加で検討する
ネットゼロの目標達成は、5-10年の短期的な排出削減計画とは異なり、はるかに広範で徹底したアプローチが必要です。これには、全ての排出源に対して削減策を実施し、1.5℃の気温上昇制限という国際的な目標に沿って持続的に削減を進めることが含まれます。
中長期の計画には、現在技術的に実現が困難な削減策も含まれることがあります。ただし、技術革新を待つだけでなく、自社での準備や改革を進めることで、これらの削減策の実現可能性を高めることが重要です。具体的には、新しい技術の開発への投資、社内の環境管理システムの強化、新しいインフラの整備など、自社の取り組みを積極的に進めることが求められます。
これらの削減策を積み重ねることで、最終的にネットゼロという野心的な目標を達成するための道筋を作ることができます。
「科学の目標設定の許可」
環境への影響の測定と管理
科学的な目標設定は、企業が環境への影響を正確に測定し、効果的に管理する手段を提供します。このプロセスでは、企業はSBTiの認定プロセスに従い、自社の温室効果ガス排出量を詳細に計測します。これには直接排出(Scope 1)、間接排出(Scope 2)、およびサプライチェーンを通じた間接排出(Scope 3)の徹底的な評価が含まれます。
測定されたデータを基に、企業は科学的根拠に基づいた削減目標を設定し、具体的な行動計画を策定します。このアプローチにより、企業は環境への負担を体系的に軽減し、持続可能な運営を実現するための基盤を築くことができます。
企業価値とブランドの向上
科学的な目標設定によって、企業の価値とブランドイメージの向上も期待できます。SBTiの認定を受けることにより、企業は市場や消費者に対して、気候変動への責任ある取り組みと実行力を示すことができます。これは、環境に敏感な消費者やビジネスパートナーに対して特に好印象を与え、良い評価を得ることにつながります。
持続可能なビジネスモデルへの移行は、長期的な視点から見ても企業のリスクを減少させ、投資家にとって魅力的な要素となります。さらに、ブランドイメージの向上は、従業員のモチベーションを高め、新しい才能の獲得にも寄与するため、企業の内部文化にもポジティブな影響を与えることが期待されます。このように、科学的目標設定は企業の外部だけでなく内部にも良い効果をもたらし、総合的な企業価値の向上を促します。
SBT参加企業が実際に感じたことをご紹介します。
・中期経営計画発表にあわせて削減目標も公表
・イノベーションしつづける、世の中の社会課題に対応しつづけるという姿勢を示すもの
・今後は投資を必要とする環境対策が増えるので、その社内説得の定量的な論拠としてSBT を活用
・環境に良いことは、顧客サービス向上になる。商品の電子化により、利便性・省エネ性を高めることが可能
・業界内で上位という自負があるので、同業他社がSBT の認定を得ている状況を、経営トップも無視できない
・役員報酬の中長期業績連動で、サステナビリティ評価が加味されるようになった
・CDP評価の影響力の大きさを痛感している
・自社の得意先でシェアの大きい業界から納入製品の製造における排出量を下げることを求められている。他者との競合もあるので、サプライチェーン上のビジネスリスクが大きい
・IR部門から、「機関投資家の半数が海外の投資家であり、削減目標を何故作らないのか」と問われた
・なぜその目標なのか、経営方針、経営計画、事業に結び付けたストーリーが必要。ビジネスにとっての将来のリスクと機会がつかめるよう、社会の環境分野の将来像を示す青写真がほしい
・削減策と根拠が伴った数値目標にしたい
・自社の社員にも訴求できるようなものにしたい
・設定前の省エネ対策の成果は含められないのでなかなか難しいが、子会社や、再エネの低価格化が進む海外拠点は、削減余地は大きいと判明
・目標達成は一社だけの削減努力だけではなく、企業が協同して排出量を減らしていく必要がある
・削減の肝になる(省エネ製品など)が政府目標 まで普及できるのかどうか(消費者の消費行動の変化も重要)
・技術革新、電力会社の係数の変化、再エネ調達環境の変化、カーボンプライシング等を想定。カーボンプライシングがかけられれば、十分な投資効果が得られる
・製造プロセスでの省エネ対策は限界に近く、製造プロセスの周囲の対策(自家発電、再エネ導入)が必要
・ロケーションベース、マーケットベースどちらかに一本化する必要がある。再エネ電力購入の効果を活かすのであれば、マーケットベースの方が良いと考える
・営業車のEV 化を進めていくが、電力原単位の影響を強く受けるので、再エネ調達も視野に入れている
「事例研究:成功した企業のストーリー」
SBTi認定を取得した企業の事例
SBTi認定を取得した企業は、環境への影響を大幅に削減し、業界で持続可能なモデルを確立しています。これには、様々なアプローチが含まれます。例えば、再生可能エネルギーを大規模に導入し、エネルギー消費のカーボンフットプリントを削減した企業、製品のライフサイクル全体で炭素排出量を減らした企業、サプライチェーン全体の環境影響を軽減した企業などがあります。
これらの企業は、科学的な基準に基づいた具体的な行動を通じて、単に環境保護に寄与するだけでなく、ビジネスの効率化、コスト削減、イノベーションの推進といった多岐にわたる利点を享受しています。このような取り組みは、経済的な成功と環境への責任を同時に果たす、模範的な事例として注目されています。
SBTi認定による実際のビジネスへの影響
SBTiの認定は、環境面での成果に留まらず、実際の事業運営にも深い影響を及ぼします。認定を受けた企業は、市場での競争力を強化し、持続可能な価値創造を推進します。また、企業の透明性が向上することで、投資家やステークホルダーからの信頼と支持をより容易に獲得することができます。
気候変動に関連する規制が厳しくなる中、SBTi認定を持つ企業は、将来のリスクへの備えが整っています。この認定は、規制の変更に柔軟に対応し、それに伴う影響を事前に考慮することを可能にします。SBTi認定はただの環境基準ではなく、企業が長期的な成功を収めるための持続可能なビジネス戦略として機能し、その重要性が日々高まっています。
「今後の展望とチャレンジ」
認定後の持続可能な成長
SBTi認定を取得した後の企業の持続可能な成長は、認定がスタートラインに過ぎず、継続的な努力と改善が求められる過程です。認定を取得したことは重要なマイルストーンですが、その価値を維持し拡大するためには、実際の実行と持続的な進歩が不可欠です。
企業は、認定取得後も、設定した排出削減目標に対する進捗を定期的にチェックし、戦略を適宜調整する必要があります。これには、新しい技術の採用、エネルギー効率の改善、再生可能エネルギーの利用拡大などが含まれ、さらに、気候変動に関連する最新の科学的知見や市場の変化に基づいて、戦略を柔軟に更新することが重要です。
持続可能な成長を達成するためには、内部でのイノベーションを推進すると同時に、外部との連携も強化することが必要です。この両方のアプローチによって、企業は持続可能な未来へ向けた実効性のある進歩を実現することができるでしょう。
産業界と政策における今後の動向
気候変動への対応は、今後も産業界全体で一層重要視されるトピックとなるでしょう。多くの産業において、炭素排出の削減とエネルギー効率の向上が主要な焦点となります。これらは競争力を決定する要素として機能し、企業間の競争においても中心的な役割を果たすようになります。
また、政府レベルでの気候変動に関する規制や政策の強化が予想されます。これにより、SBTiのようなイニシアティブがさらに重要な役割を担うことになるでしょう。政策の変化は企業に新たな挑戦をもたらし、持続可能な技術やビジネスモデルへの移行を加速させることになります。
企業は、これらの動向を見据え、自社のビジネス戦略を適応させる必要があります。気候変動対策は、単なる規制の遵守を超え、新たな市場機会や競争力の源泉となることが期待されています。このため、先見の明を持って行動することが、今後のビジネスの成功に不可欠となるでしょう。
まとめ
気候変動は今後、産業界にとって避けて通れない重要な課題となります。持続可能性への取り組みが、企業の競争力、イノベーション能力、市場での地位を左右するようになるでしょう。特に、炭素排出削減とエネルギー効率の向上は、多くの産業で中心的な焦点となります。これらは、新たなビジネスモデルと技術革新の推進力となり、企業間の競争においても重要な要素として機能します。
政府レベルでの規制と政策も、気候変動対策の強化に伴い進化し続けることが予想さ、SBTiのようなイニシアティブはより重要な役割を担うようになり、企業がこれに準じた行動を取ることがますます求められます。このような政策や規制の変化は、企業にとっては挑戦であると同時に、新たな市場を開拓し競争優位を築く機会を提供します。
企業は、これらの外部環境の変化に適応するため、自社の戦略を柔軟に調整し、環境への取り組みをビジネスの核として位置づける必要があります。気候変動対策は、単に規制の遵守を超え、持続可能な成長と長期的な成功への道を切り開くための戦略的なアプローチとして組み込むべきです。このプロセスは、内部のイノベーション推進と外部との積極的な連携を通じて、全体としての持続可能性を高め、社会全体の変革をリードするための基盤を築くことにつながります。
SBTiとSBTを活用することは、単なる環境対策ではない科学的根拠に基づいた目標設定に準じて、企業の持続可能性と競争力を高めるための重要なステップとなっています。したがって、SBTiへの参加とSBTの設定は、未来志向のビジネス戦略として避けて通れない要素として位置づけられています。